変 態 ― metamorphose ―【完】
その夜はねだられて、綴のアパートに泊まった。
翌日は朝から大学の講義があるから帰りたかったけれど、泊まっていってと言う綴の眼差しがあまりに切実で、ひとりにしてはいけない気がした。

まるで縋るように一秒の隙もなく抱かれて、綴の孤独を肌で感じた。

そうやって肌を重ねたところでなんの解決にもならないし、綴のすべてを理解をすることもできない。

それでも、この瞬間だけでも綴を苦しみから解放できるのなら、それに応えたかった。
抱き合うことで苦しみがぜんぶあたしに移ってくれるのなら、ぜんぶ引き受けたかった。

いっそ、ひとつになってしまえたらいいのに。
あたしが綴のなかに、溶けて消えてしまって構わないから。

そう願うのは間違っているだろうか。


「いち花、泊まってくれてありがとう」

薄闇のなか、泣き出しそうな声で言われた。
あたしは白線で描かれたアベリアを指先でなぞりながら、鼠径部(そけいぶ)を舌先でなぞった。

泣き出しそうだった声はちいさく甘い吐息へと変わり、震える肢体はカーテンの隙間から差し込む月明かりに照らされた。
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