変 態 ― metamorphose ―【完】
娘に胡麻を()って、ママとどうにかなろうなんて。


彼らの浅はかさ、そしてそんな彼らに嘗められている自分自身に嫌気がさした。

あたしがもっと大人だったら――。

どうにもならないことで憤り、はやく大人になりたいと願った。


もちろん、世界中の男の人が敵だとは思っていない。

綴はやさしいし、はじめての彼氏も悪い人じゃなかった。
バイト先の男の人だって、たまに感じの悪い人がいても悪党というほどではない。

それに、同性にだって嫌な人は当たり前にいる。
性別だけでまっぷたつに善悪をつけようなんて思わない。

だけど、まだ残ってる。

ちいさい頃にできた傷は薄っすらと白線のまま残って、日が照ればくっきりと浮かび上がってその存在を誇示する。
まだここにいるよ、と。


完全には消えない。消えることはない。

古傷は、痛みやすいから。
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