変 態 ― metamorphose ―【完】
「あった。はい、チカくん。これ使って」

「え?」

「携帯用の染み抜き。応急処理だけど、おしぼりで拭くよりはずっといいから。そういうふうに擦るのは逆効果だよ」

「いいよ、そんな。シャツ一枚くらい」

「もったいないよ。遠慮しないで使って。こういうときのために持ち歩いてるんだから」

「でも」

「ほら、使って」

そう言って差し出すと、チカくんはおずおずと手をのばした。
手が大きいせいか、染み抜きのボトルがとたんにミニチュアサイズに見える。

「ありがとう、いち花……」

チカくんの表情がするするほどけていく。


号泣の次は、乳首染みか。
次回はどうなるだろう。

あたしは少し意地悪な笑みを浮かべながら、大きな背中を丸めて染み抜きをするチカくんを見守った。
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