紅葉踏み分け、君思ふ

昨日覚えた気配を頼りに足を進める。

(ここ、大広間?それに、静かすぎない・・・?)

恐る恐る襖を開ける。その瞬間、大きな声と拍手がわたしの耳に入る。

「ようこそ!かえでさん!!」

「・・・え?」

わたしが目の当たりにしたのはすこし薄暗い部屋とごちそう。

「昨日、かえでさんが寝た後に、歓迎会しよう、って話になったんです」

総司さんがわたしを見ながら今の状況を説明してくれる。

「そうそう!オレが提案したんだ!最初はそんな時間ないだろって、土方さんに言われたけどさ・・・」

平助くんの言葉を引き継いだのは近藤さん。

「敬助ができるんじゃないかっていってな。昨日、かえで君疲れていたから起きる時間も遅くなるだろうと」

驚いて山南さんの方へ顔を向ける。当の本人はすまし顔。

「で、みんなで早起きして準備したんだ、な?」

左之さんがみんなに向けて言う。

「新八を起こすのが一番大変だった」

感慨深げに一さんが呟く。

(うそ、わたしの、ために・・・?)

「料理は源さんと土方さんが・・・ってえ?泣いてる・・・?」

(・・・え?)

全く気付かなかった。

(な、なんで・・・?)

「待って。オレ、これ提案しない方がよかった?」

オロオロとしている平助君の袖をとっさに掴む。

「ち、違うの・・・う、嬉しくて。まさか、歓迎会なんて、開いてくれるとは、思わなかったから・・・」

わたしはみんなに今の精一杯の笑顔を向ける。

「ありがとう、本当に」

その瞬間、近藤さんと山南さん、源さん以外のみんながバッ、と後ろを向いた。

(あれ・・・?わたし、なにかしちゃった・・・)

困った顔だと分かったのか、少し笑いながら山南さんが言う。

「大丈夫ですよ。かえでさんのせいではないので。さ、先にご飯たべましょう?」

「あ、はい」
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