紅葉踏み分け、君思ふ

有名人大集合⁉︎

隊士たちを倒した後。わたしは京の街を歩いていた。

お見舞いの品を物色していたら、その中身手紙が一通、混ざっていたのだ。

それを読むと相手は坂本さんだった。

(まぁ、二ヶ月ぐらい音信不通だったらそりゃあ心配するよね・・・)

そこには、わたしの無事を心配すると共に、もし自分と会える状態になったら「近江屋」にいるから来てほしい、とも記されていた。

そんな経緯で、わたしはこれからのことなどを話すために近江屋に向かうことにしたのだ。

「あの、かえでさん。今、どこ向かっているんですか?」

そう聞くのは隣を歩く源さん。わたしが外に出ると言った時、もしものために護衛としてついてきてくれた(わたしはいなくてもいいんだけどね)。

「近江屋というところです。知ってます?」

「近江屋・・・知ってるには知ってますが、あそこは尊王攘夷の志士たちが多いと・・・」

「はい。その尊王攘夷派に会うために向かっているんですから」

「え⁉︎そうなのですか⁉︎聞いてませんよ!」

「まぁ、そんなこと言ったら確実に反対されますしね・・・ってことで、これ秘密にしていてください!後、二、三ヶ月だけでも!」

「・・・はぁ、三ヶ月だけですよ」

「!あ、ありがとうございます・・・!」

少し呆れたように笑う源さんに笑顔でお礼を言うと「ただし、私が危ないと感じたらすぐに帰りますからね」と釘を刺された。


「いらっしゃい!」

「すみません。才谷先生はいらっしゃいますか?」

才谷、って言うのは坂本龍馬の偽名。この時代、志士は自分たちのことがバレないように頻繁に偽名を使っていたのだ。

「才谷先生どすか?今は部屋にいらっしゃいますえ。お会いになられるか、聞いてきまひょか?」

「お願いします。才谷先生には本宮と言えばわかると思います」

そういうと女中さんは二階へ向かう。きっと、才谷・・・坂本さんの元へ向かったのだろう。

しばらくするとさっきの女中さんが戻ってきて「才谷先生がお会いになられるようどす。着いてきとぉくれやす」と言われ、女中さんに一つの部屋に連れてこられた。

「才谷先生、本宮様を連れてきました」

「おぉ、入って入って」

(あれ?この声、坂本さんとちょっと違うような・・・?)

とりあえず中に入ってみるとそこには坂本さん以外に三人、円になって座っていた。

「おぉ!かえで!久しぶり!手紙読んだがか?」

相変わらずハイテンションな坂本さんに笑顔で返事をする。

「はい。昨日目が覚めて・・・ごめんなさい!無理を言ったわたしが連絡しないなんて・・・あ、先に紹介しておきます。わたしの仲間の井上源三郎さんです。口止めはちゃんとしているんで、大丈夫です」

「初めまして。井上と言います」

「ほぉ、井上殿!うちは坂本龍馬や。よろしゅうな」

「で、坂本さん、そっちの人たちは・・・?」

「こいつらはうちの仲間や。ほら、自己紹介、自己紹介」

その言葉に最初に口を開いたのは顔が細く、多分このメンバーの中で一番背が低い・・・と思う人。

「俺は、高杉晋作だ」

「・・・え⁉︎高杉、晋作⁉︎」

あまりにもメジャーすぎる名前に目を見開く。

「俺、入江九一」

そう言ったのは高杉さんと正反対のように背が高い人。

「オレは桂小五郎だ」

手を挙げて言った色黒の人。

(ちょ、ちょ、マジ、で・・・?)

あまりにも有名な人たちにゴクリ、と息の呑む。

「・・・なんだ?俺の顔になんか文句あんのか?」

そう言った入江さんにブンブンと顔を振って否定する。

「あ・・・えっと、本宮かえで、です・・・わたしのことは・・・」

「龍馬からは全く聞かされてねぇよ。ってか、龍馬。こいつ、浪士組じゃねぇのか?」

こいつ、と桂さんが指さしたのは源さん。急なカミングアウトにみんな(わたしと坂本さん除く)の気温がグッと下がったのがわかった。

「あの!わたしが全部話すので喧嘩はやめてくださいね⁉︎喧嘩したら、わたし帰りますよ⁉︎」

「ちょ、今かえでに帰られると困るき一回殺気しまえ!」

慌てて二人で止めると高杉さんが驚くように坂本さんと、それからわたしを見る。

「坂本さんが引き止める・・・?お前、本宮だったよな?坂本、お前本宮と何かあった・・・?」

「かえでと取引しちょったんちや。ほら、前言いよったやつだ。」

「あ、ありがとうございます!」
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