クールで一途な後輩くんと同居してみた


 映っていたのは、緋織先輩の取り巻き①の写真だった。


 目線がこちらを向いていないから、たぶん隠し撮りだ。



「チャウデ」

「まだ何も言ってませんが」

「カ、カエシテヤ」

「あ、はい……」



 素直に渡してしまう。


 ナルセが明らかに狼狽(うろた)えていて、顔を真っ赤にしている。


 そんな姿に、俺もつられて動揺した。


 効果覿面(てきめん)なのが怖いくらい、ナルセは大人しくなる。



「え、……好きってことですか?」

「チャウチャウ」

「いやさすがにこれは、」

「マルチーズ」

「否定かと思ったら犬種を唱えてるだけだった」



 どんな取り乱し方なんだ。


 だけどこれで、俺達の関係は対等ということじゃないだろうか。


 俺はナルセが誰を好きだろうが興味ないけど、知られることがナルセの弱味なら。



「変に緋織先輩を嗅ぎ回るなら、このこと本人に伝えますけど」



 今度は俺がこの人を脅す番。


 ……でもこれ、本人気付いてるだろ。


 わざわざナルセを弱らせる方法として教えてきたってことは、待ち受けがなんだったか把握しててもおかしくない。



「ええ~……いやぁ、ははは……」

「ていうか緋織先輩を狙ってるのも、この人が近くにいるからじゃないんですか?」

「ははは! 今日はこの辺にしとこかな~!」



 そう言ってナルセは逃げるようにふらふらと部室を出ていった。


 図星か。



「……はぁ、なんだ。……よかった」



 ほっと息を吐いた後。


 俺も廊下に足を向けて、急ぐことにした。


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