見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~

開いた扉の前で二人で一礼して、ゆっくりと歩き出す。

「おめでとう!」
「乃愛ちゃん、可愛い!」
「乃愛さんの隣は俺がっ」ペシーン!
といったみんなからの祝福の声と拍手が俺達を包む。


もう夫婦として生活して4か月経ってるとはいえ、やっぱなんかこう…込み上げてくるものがあるな。

そう思って歩きながら乃愛を見ると、乃愛が俺を見上げた。
その目には涙が溜まっていて、今にもこぼれ落ちそう。

…乃愛も同じ気持ちだったのかな…
ははっ、なんかうれし。

ふ、と笑いかけると、乃愛もエヘヘと笑い、涙が頬を伝った。

俺はその場で止まり、乃愛の涙を拭い……唇に触れるだけのキスをした。

目をぱちくりさせる乃愛に「俺以外にきれいな泣き顔を見せないで」と囁くと、綺麗にふふっと笑った。

やべ、すげぇ可愛い。
抱き締めてぇ…

その時「ちょっ伊織兄ちゃん、反則じゃねっ!?」とハルが立ち上がったから、それに便乗して乃愛を抱き締めた。

「ハル、反則じゃねぇよ、乃愛は俺のだからな」

「くっそ、いーなぁ兄ちゃん、ちょー羨ましすぎなんだけどー」

そこへナッシーがパンパンと手を叩いた。
「はいはーい、つっくんもこれ幸いと抱き締めないのー。乃愛ちゃんが困ってるよー?」

「ナッシー…何で〝これ幸い〞ってわかった?」
「アハ、つっくんと俺の付き合いをなめてもらっちゃ困るなー、それくらいわかるって。んじゃ続きするよー」

そんな気の抜けた会話で笑いが起こり、乃愛もすっかり涙が乾いた様で、可愛い笑顔でみんなに応えていた。


ナッシーとハルと俺のこのノリで緊張する事もなく、誓いの言葉も結婚証明書へのサインも和やかな雰囲気で行うことができた。

あとはもう退場か…と思ったその時、ナッシーが俺を見て言う。
「つっくん、誓いのキスする?」

俺が答える前にハルが叫ぶ。

「ちょーナッシーさん、それはもうさっきしてたじゃん」

「アハハ、それもそうだね」

「いや、誓いのはしてねぇけど?」
俺も参戦してやる。

「じゃーさっきのは何だよー」

「え?可愛かったからさ」

「んじゃあ誓いのキス、やろっか」

「や、梨本さん、そんな軽く言わないで…」

「え、乃愛はしたくないの?」

「や、だからしたいしたくないの話でなくて…」

「じゃあするってことな」

「え、ちょっと待っ…」

「はーい、じゃあ結婚して4か月の新郎新婦の誓いのキスでーす」


「乃愛、一生ずっと愛してるよ」

俺の言葉にニコ、と微笑んだ乃愛に口づけた。

ちゅ………


…………


「…っもう、長いってば!」

唇が離れるとすぐ、真っ赤な乃愛に怒られた。

「あははは、それだけ俺の愛がたくさんってことだから」

「もぉ……でも伊織らしい。ふふっ」

乃愛がちょっと困ったように、でも優しく笑ってくれた。
ふ、マジで俺より大人で…可愛い。

「つっくん、よかったね、許してもらえて。じゃあ新郎新婦の退場でーす」

俺達が歩き出すと、みんなが「おめでとう!」と花びらをふわりと上に放った。

色とりどりの花びらが乃愛に優しく降り注ぐ様は、まるで天使か花の妖精が地上に舞い降りてきたかのようで……

やべぇ、顔がにやけてしまう。
…またドキドキしてきた…

ってゆー俺の気持ちに水を差すハルの言葉が聞こえてきた。

「乃愛さん、マジで天使なんだけど!つか花の妖精じゃね?」

おっ…俺が思ったことと同じことをっ!
「ハルっ!お前はぁ」

「いや、マジでそーじゃん?伊織兄ちゃんはそう思わねぇの?」

その言葉に乃愛が俺を見る。

「だっだから、俺と同じことを思って、それを俺より先に言うんじゃねぇっつってんのっ!」

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