無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜
突然の案件
 『住まいリィ』は、優をはじめ数人の社員と事務員が働くこじんまりした会社だ。

 社長が二十年程前に始めた会社は、丁寧な仕事と人柄が評価され、口コミで仕事がコンスタントに舞い込む。特に、優が入社してからは、優を指名する客が後を絶たない。アットホームな会社ではあるが、業績は安定している。

 もちろん大手からの依頼もあるのだが、あくまでもリフォームやリノベーションである。

 この日、住まいリィには想定外の連絡が入る。

「住まいリィでございます」
「大橋建設の大橋と申します」
「いつもお世話になっております」

 事務員は、いつも通りの対応をする。まさか大橋建設の御曹司自ら連絡してきているとは思いもしない。

「社長に取り次いでいただくことは可能でしょうか?」
「確認いたします。少々お待ちいただけますか?」
「はい」

 一旦電話を保留し、目の前にいる社長に声を掛ける。オフィスに社長室はなく、みんな同じフロアにいるのだ。
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