無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜
「コホン、専務」

 お客様の前でのやり取りに、皆川が割って入る。

「木島様、失礼いたしました。本日はこちらまでご足労いただきありがとうございます」
「大橋専務直々に推薦いただいたプランナーさんとお会い出来るのを妻と楽しみにしていました」
「ご希望に添えるよう、私も最後まで責任を持ちますのでご安心下さい」

 優は、大工であるはずの瑛斗が専務であり、自分を推薦した人物であった衝撃に呆けたままだ。

「早速ですが、今日はできる限りの希望をお聞きしたいと思います。島田さん」
「は、はい」
 
 まだまだ専務に言いたいことも聞きたいこともあるが、お客様の前だ。しかも、限られた時間の中で、最大限の希望を聞いておかなければならない。

 一気に仕事モードのなった優は、手帳を取り出し話を聞く体制に入る。
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