無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜
「一級建築士を持っていたら、もっと仕事の幅が広がるのに……」
「優ちゃんは、大手で働きたくて資格を取ったわけではないんだ。自分が知識を持つことによって少しでもお客さんのプラスになればいいそうだ。今の仕事に誇りを持っている」

 話を聞いて、瑛斗は更に優に興味を持った。実は、優を見た瞬間ドキッと胸の高鳴りを感じたのだが、今までにない気持ちに気づかないふりをした。だが、聞けば聞くほど彼女に惹かれてしまう。

「さあ、話はこれぐらいにして、続きを進めよう。納期も迫っておる」

 現場は、間取りの変更など大工仕事が終われば終わりではない。この後、内装業者が仕上げをしていくのだ。大工の仕事が遅れれば、自ずと他の仕事が遅れるのであって、迷惑は掛けられない。その辺りの調整も優が行っている。

 瑛斗はあと数日、仕事の調整がつく日はこの現場を手伝うことになりそうだ。

 密かに優に会いたい気持ちが芽生えている――。
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