【一気読み改訂版】黒煙のレクイエム

第41話

７月３日頃であった。

あいつらの家で新たなもめごとが発生した。

あいつの姉が解雇予告の書面を受けとる前にクラレの工場をやめた…

その知らせが、あいつらの家に伝わった。

あいつら家族は、より強い不安に襲われた。

あいつがショッケンをやめた。

義母も、母恵夢《ポエム》の待遇面に強い不満があると言うてやめた。

そのまた上に、嫂《おねえ》がパート先の待遇面が激悪であると言うてやめた。

その結果、あいつらの家に収入が１円も入らなくなった。

あいつらの親類縁者たちに援助を頼みたいが、エンリョがあるから頼めない…

アタシは、あいつらに対するうらみつらみをより一層強めたから助けることはできない!!

その日の夜８時半頃であった。

アタシがバイトしているファミマに嫂《おねえ》がとつぜんやって来た。

嫂《おねえ》は、アタシに送金してほしいと頼んだ。

アタシは『イヤ!!』と言うて強く拒否した。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに入れ替える仕事をしながら嫂《おねえ》に怒った声で言うた。

「あんたね!!甘ったれるのもいいかげんにしてよね!!これ以上営業妨害をするのであれば、アタシの知人の組長を呼ぶわよ!!」
「こずえさん、アタシはこずえさんに送金をお願いしに来たのです。」
「イヤ!!拒否するわよ!!帰んなさいと言うたら帰んなさいよストーカー女!!」
「アタシはストーカーていません…こずえさんに助けてほしいとお願いしているだけです。」
「はぐいたらしいわね!!ぶっ殺すわよ!!」
「こずえさん、助けてください…」
「イヤと言ったらイヤ!!」
「こずえさん、できたら自分の実家を頼りたいのよ…だけど、アタシの実家は兄が実権を握っているから、お願いしたくてもお願いができないのです…それに、うちは友人がひとりもいないのです…アタシの実家に頼めないのでますます困っているのです。」
「だったら市役所に行って、生活保護のシンセイをしたら!?」
「市役所…なんで市役所に行くのですか!?」
「今の状況下で助けを求めることができるのは市役所しかないのよ!!」
「こずえさん、アタシはこずえさんのお給料の全額を送ってほしいとは言うてないのです…少しだけでもいいから送ってください…借家の家賃・２万円…1000円でもいいから送ってください!!」
「ダメ!!市役所に行け!!」
「市役所に行けません!!」
「ますますはぐいたらしいわねストーカー女!!カツアゲ女!!」
「こずえさん、なんでひどいことを言うのですか!?」
「もう怒ったわよ!!今から知人の組長に電話するわよ!!組長に電話してあんたの実家に暗殺者《ヒットマン》を送りこんでと頼むわよ…若い構成員《つばめ》10人くらいであんたの嫂《おねえ》をリンカンして殺してと頼むわよ!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

アタシにイカクされた嫂《おねえ》は、叫び声をあげながら店から逃げ出した。

何なのよ一体…

あいつらは…

自力で危機を乗り越えて行く力がないみたいね…

アタシは、するどい目つきで足早に逃げた嫂《おねえ》をにらみつけながらつぶやいた。