【一気読み改訂版】黒煙のレクイエム

第68話

さて、その頃であった。

アタシは、つばきちゃんと一緒に地下鉄矢場駅の近くにあるみそかつ屋さんで遅いランチを摂っていた。

アタシとつばきちゃんは、900円のみそかつ丼を食べながらお話をした。

「ねえこずえちゃん…ひろつぐが勤務していた自動車教習所に近いうちに長野県の公安委員会の監査が入るみたいよ。」
「あいつが勤務をしている自動車教習所が壊れようが燃えてなくなろうがどーでもいいのよ…」
「そうね…」

みそかつ丼を食べる手を一度止めたアタシは、つばきちゃんにこう言うた。

「つばきちゃん。」
「どうしたのよ？」
「つばきちゃん…もし…親せきの人からお見合いを持ちかけられたら…つばきちゃんはどうするの？」
「そんなの決まってるじゃん…お見合いの当日…どこかへ遠くへ逃げるわよ…」
「そうよね。」
「こずえちゃん…もっと気持ちを強く持ちなよ…こずえちゃんが弱い気持ちでいたら、足元を見られるわよ…女ひとりで生きて行くのだったら、気持ちを強く持ちなよ。」

つばきちゃんはアタシにこう言うた後、食べかけのみそかつ丼を食べた。

その日の夜は、バンテリンドームナゴヤでプロ野球・中日ドラゴンズ－東京読売ジャイアンツのナイターが開催される日だったので、試合終了までスタンドでビールの売り子さんのバイトをした。

試合終了後、アタシは事務所に売上金を届けに行った。

その後、アタシの取り分を受け取った。

深夜１時頃、アタシはマンスリーアパートへ帰宅した。

アタシが暮らしているマンスリーアパートの部屋にて…

アタシは、テーブルの上に赤茶色のバッグを置いたあと黒のボブソンのジーンズを脱いだ。

その後、ざぶとんに座った。

ざぶとんに座ったアタシは、バッグの中からスマホを取り出してラインのメッセージが来ていないかどうか調べた。

ラインを閉じた後、アタシはバッグの中にスマホをしまった。

その後、グレーのＴシャツを脱いだ。

衣服の中から、白のデイジーのケミカルレースのブラジャー・ショーツがあらわになった。

つづいて、長い髪の毛を束ねているターコイズのゴムひもを解いた。

アタシは、テーブルの上にほおづえをつきながら考え事をした。

アタシは、昼間につばきちゃんから言われた言葉を思い出した。

アタシが弱い気持ちでいたので…

足元を見られた…

次から次へと再婚の話が入るのは…

アタシが気持ちが弱いから？

それとも…

震災孤児でひとりぼっちになったから？

どっちなのよ…

「キーッ!!」

いらだちがつのったアタシは、右手でほがその髪の毛を思い切りかきむしったあと、テーブルに顔を伏せてくすんくすんと泣いた。