クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ

10.真っ直ぐな想い side.A



「ただいま。咲玖帰ってる?」


ワックに寄って帰らないかと言われた空手部仲間の誘いを断り、真っ直ぐ直帰した。

たまに一緒に行くこともあるけど、今日は1秒でも早く帰りたかった。


「咲玖?」


電気が点いてなくて真っ暗だ。
まだ帰ってないのか?さっき電話しても出なかったし。

リビングの電気を点けると――


「わっ」

「……あ、蒼永。お帰りなさい」


ソファの上に体育座りしている咲玖がいた。


「ただいま…何してたの?」

「ちょっと瞑想したくて…」


瞑想?

咲玖の目の前には火を灯したキャンドルが置かれている。
ほのかに甘い香りが漂っているので、多分アロマキャンドルだろう。


「それ、去年の誕プレに春日井がくれたやつ?」

「そう…火を見てると落ち着くって聞いたから、火を見ながら瞑想してたの」

「そうなんだ…」


なんで急に瞑想なんかし始めたんだろう…。
咲玖はたまに突拍子もないこと始めるからな…。

俺が思ってたのと全然違って、だいぶ戸惑いが隠せない。


「あのさ、」
「蒼永。」
「うん?」
「大事な話があるんです」
「あ、うん」
「聞いてもらえますか…」


どうしたんだよ、そんなに改まって……。


< 94 / 200 >

この作品をシェア

pagetop