政略結婚は純愛のように〜子育て編〜
その結果、由梨はくたくたに疲れてしまい、夜中に起きられなかったのだ。
 
あれをやめてくれれば、なんとかなるだろう。
 
……それなのに。

「それはできない」
 
にっこりと笑って彼はきっぱりと首を横に振る。そしてややわざとらしく顔をしかめた。

「もちろん由梨が本当に嫌がっているなら、すぐにやめる。だけどそうでないのに、引ける自信は俺にはないな」

「そんな……! わ、私は本心から言ってました……! 昨日も……」
 
慌てて反論するけれど。

「昨日も? 本当に?」
 
素早く切り返されて口を閉じる。
 
言葉に詰まって隆之を見ると、彼はまた由梨をジッと見つめている。
 
由梨の自信はまたすぐにぐにゃりと曲がってしまう。
 
……昨夜は。
 
あまりに情熱的な彼の攻撃に、限界を感じてやめてほしいと思ったのは確かだが、本心から嫌だと思ったわけではない。

よくよく考えてみるとむしろその逆で……。

結局、最後には由梨の方からも彼を求めてしまったのだ。

「嫌だった? ……本当に?」
 
由梨が本心から嫌がっていないことなどお見通しの彼のわざとらしい追求に、由梨は両手で顔を覆う。

「もう……! 隆之さん」
 
声をあげると、隆之がまた噴き出して肩を揺らして笑い出した。
 
……大きな声であれこれ言い合う両親をよそに、いつのまにか沙羅はすやすやと気持ちよさそうに平和な寝息を立てていた。
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