愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする

　違うと言いたいけれど、遼生さんは私のことだけを忘れてしまっていたなら、それが正しいのかもしれない。

　でも彼は、私との待ち合わせ場所に向かう途中で事故に遭ったんだよね？　決して私のことが嫌いになったわけではないと信じてもいいのかな？

　ずっと嫌われたと思っていたから、目頭が熱くなる。

「それなのに、このタイミングで再び現れるなんて……。あなた、遼生さんが近々副社長に就任するという噂を聞きつけて彼に記憶がないことをいいことに近づいたの？」

「えっ？　そんな、違います！」

　思いもよらぬ言いがかりに困惑する中、神楽坂さんは怒りを露わにする。

「あなたのことは忘れているはずなのに、遼生さんは決して私と結婚すると言わないの。バカみたいに『運命の相手以外とは結婚できない。珠緒も心から好いた相手と結婚するべきだ』って言うのよ。……四年前、『俺は運命の相手と結婚する』と言われた時のように！」

　感情が昂った神楽坂さんは大きな瞳から涙を零した。