愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
「わかったらさっさと行ってこい。急がないとフライトに間に合わないぞ」

「え? あっ……」

 初めて見る父の優しい顔に戸惑う。そしてこれまで口にしたことがなかった言葉、「ありがとう」と言えば、父は驚いた表情を見せた後に目を細めた。

「墓地の入口にタクシーを待たせてある。気をつけてな」

「あぁ。……本当にありがとう」

 面と向かって感謝の言葉を伝えることに照れ臭さを感じ、まともに父の顔を見ることができなくなる。

 足早に去り、墓地入口で待っていたタクシーに乗って空港へと向かう。その道中、父から受け取ったチケットを眺めながら様々な思いが込み上がる。

 母と同じように父にも萌との結婚には反対されると思っていた。でも違ったんだな。初めて知る父の思いに感謝しながら俺は新千歳空港へと向かった。


 約一時間半で無事に新千歳空港に到着し、俺はすぐに萌のもとへと急いだ。しかし、通い慣れたはずの洋菓子店が近づくにつれて緊張が増していく。

 記憶を取り戻してから会うのは初めてだからだろうか。会ったらまず、記憶が戻ったことを伝え、萌のことだけを忘れてしまっていたことも謝りたい。
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