図書委員のさいとうさん。
さいとうさん。
今日の卵は素晴らしい。
きっといい仔が孵るわ。



私は卵をある本の中に持ち帰った。
この本の中の環境が、この仔達を育てるのにとてもいい環境だから。



卵から孵るのは、ペガサス。
人間の心を糧にして卵になり、大きくなったら世界中を駆け巡り夢のかけらを人間たちに蒔いてくれる。



現代の人間は夢を見ない。



大人は仕事仕事仕事。
色々な夢が本来たくさんあるはずの子供たちは勉強に追われている。
心が育つには色々な夢を見てもらわないとならない。



空を飛びたい。
お菓子の家をみつけてたくさん食べたい。
ジャングルでドキドキするような探検をしたい。 



そんな楽しいことは想像せずに、将来の職業に向かって勉強しつづける。
それが現代の子供たち。
このままでは、私達は消滅してしまう。
そこで一族を代表して私はここへやってきた。夢を育む能力の高い、思春期の子供たちのところ。
ここでたくさんの卵を孵して、ペガサス達に世界中を駆け巡ってもらうために。



『夢魔』



と、私は呼ばれている。
人間の夢の力で我々はここに存在している。
年々減っていく夢の力。
もう人間の姿を維持するのも難しい。
子供の姿の理由も、そこだ。



『みんな、いい仔ね。』



先に孵ったペガサス達が、私に寄ってきた。
虹色に輝く卵を大切に藁の中に置き、ペガサス達に餌を与えた。
キラキラしたかけら。
あの3人が夢を見ていたときに、少しだけ夢のかけらを頂いたのだ。



夢のかけらは餌としては最高のものだ。
体内で夢のかけらを育てて、大人になったペガサスはかけらを人間たちに蒔く。そしてまた私達夢魔やペガサスに還っていく。



唯一、それを知っている絢。
本の中の魔女がとても聡い人物だったため、絢に話して100年もの間、心を育てて私にくれた。



マーサおばあさんと絢には本当に感謝している。この虹色の卵は、間違いなく群れを率いる力を持つペガサスになる。
私の、私達の計画も大きく前進するだろう。








新学期。
私はまたここにいる。
図書委員のさいとうさんとして。
今日も子供たちに夢をみてもらうために。






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