転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
懐かしいあの人との再会

運命の出逢いから2年が経過し、僕達は10歳になった。
年も明けて寒さが一段と厳しくなってきた冬のある日、アリストロ伯爵一家が遊びに来ていた。

「今日は今話題のお菓子も持ってきているよ。私は最近こればかり食べているんだよ」

ハハハとお腹を擦るアリストロ伯爵。

「ジョージ、食べ過ぎじゃないか?」

お父様がクスリと笑いながらアリストロ伯爵のお腹を見る。

そんなに美味しいお菓子なんだ!
クレアとシェイラもニコニコしている。

「少し変わったお菓子なのですが、甘くて美味しくて私達も大好きなんですよ」

シェイラが皆に美味しさを伝えてくれる。
どんなお菓子?とワクワクしていた。

それは、僕とルイにとってはまたしても衝撃の出逢いだった!
アリストロ伯爵のお気に入りのお菓子は白くて丸くて柔らかいもの。

大福!!?

お店の名前を聞いてさらに震えた。
僕達が前世の頃に大好きだったお店と同じ店名。

『イチオシ堂』

アリストロ伯爵に大福のお店の場所を教えてもらった。
僕達の鬼気迫る様子に少し驚いていたが「そんなに気に入ったのかい?嬉しいねぇ」と笑っていた。

皆で大福を食べている時は、懐かしいこの味に涙を我慢するのに必死だった。

すぐにお父様に許可を取り、翌日に僕達は外出した。
もちろん『イチオシ堂』へ。

僕はルイの手を握る。
もしかしたら同じ転生者に逢えるのでは……?
いや、そうに決まっている!
だって『イチオシ堂』で『大福』なんて!

ルイも手を握り返して僕を見る。

「この不思議な生まれ変わりをしている人に逢えるのかもね。もしかしたらその人は…いや、そこまでの偶然は……」

ルイは首を振って否定するが、またその否定を否定する。
考えてしまうのも無理はない。
僕だってそうだ。

「もし、僕達と同じなら…名前も……?」

お店に着くまでお互いの手を握り、普段はしない緊張をしていた。

お店に到着すると驚き過ぎてしばらく言葉が出てこなかった。

「ねぇ、ルイ。ここは日本なの…?」

「……ああ、ここだけそうみたいだな」

周りの西洋風の建物が建ち並ぶ中に異質な建物がある。
日本を感じさせる和風の造りのお店。
この世界ではあり得ない形の建物だ!

「ル、ルイッ!!」

暖簾には『イチオシ堂』の文字。
この世界の文字と……日本のカタカナと漢字で。
ルイも気づいていて、僕達は寒さも忘れてしばらく暖簾をじっと見ていた。

「行こう!」

頼れる兄のルイは僕の手を強く握り、僕を見る。
こくりと頷き返してルイと一緒にお店の中へ入った。


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