転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
ある日のローズ菓子店

ここは王都の店舗が建ち並ぶ一角にあるローズ菓子店。
今やフラワード王国の有名菓子となった『マカロン』が人気で、若い女性を中心に毎日たくさんのお客様がご来店される。

今日は朝から通常の営業分とお得意様からのご注文分を準備する為に慌ただしく時間が過ぎていた。

「ショートケーキのデコレーションは終了しました!」
「マカロンも焼き上がりました!」
「クッキーの店舗用の分はこちらにください!」

「いらっしゃいませ!」
「プレゼント用ですか?」

従業員は厨房や売場を行き来し、声を掛け合う。
そして、お菓子の甘い幸せな香りがお店に広がる。
とても忙しいけれど、それよりも心が浮き立つ。
パティシエ達は自分達が誇る菓子をたくさん作り、販売員達は営業中もそわそわしている。

「こーら。何回鏡を見に行くの?大丈夫!可愛いわよ!」

「店長!すみません。でも、もうすぐご来店される時間だから気になっちゃって」

ローズ菓子店の店長、イリスは頬を染めた若い従業員を見てクスリと微笑む。
イリスは黒い髪をひとつにまとめ帽子を被り、茶色のワンピースに白いエプロンのローズ菓子店の制服を着ている。年齢は20代後半くらいの女性だ。

「そうね。そろそろいらっしゃるわね」

すると、馬車が止まる音が聞こえた。


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