転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
手紙

毎年恒例の行事でもあるクスフォード家とアリストロ家で避暑地に遊びに行ったり、僕達4人で、時には真璃愛も一緒に5人で王都の街に出掛けたりした。

ルイとシェイラは誰が見ても惹かれ合っているのが分かるくらい、特別な雰囲気がある。
植物やお花が好きなシェイラ。
シェイラのお気に入りのお花が咲いたようで、嬉しそうにルイに「早く見せたい!」と言っていた。
シェイラに日傘をさしてあげながら、アリストロ家の庭園を散歩している。
ルイの眼差しがとても甘い。

僕はクレアへおすすめの本と画集を持ってきていた。
アリストロ家の案内された部屋のソファーに座り、クレアを待っているあいだ、本を開いた。

部屋の窓からは心地よい風が届き、僕の頬を撫でる。
夏もそろそろ終わりに近づいてきたかな、なんて思っていたら強めの風が入ってきた!

「わっ!」

本のページがパラパラと捲られる。
すると、紙が数枚風に飛ばされて僕の近くにヒラリと落ちてきた!

どうやら窓の近くの棚の上に、本と一緒に置いてあったらしい。
僕が見たくない緑色の手紙だった。
封筒から出されていたのかな。

僕は眉をひそめて読んでいた本をソファーに置き、手紙を拾いに行く。
嬉しそうに手紙を読むクレアを思い出す。
クレアが頬を赤く染める『大好きな友達』から届く緑色の便箋だ。
きっとクレアがここで読んでいたのだろう。
拾いながら見てはいけないと思いサッと目をそらしが、見たくもない文字が目に入ってしまった。

『クレア、愛しているよ』

ピタリと僕の動きが止まる。

「……ッ!」

やはり、ふたりは恋人同士なんだ……!!

震える手で手紙を元の棚の上に置き、僕は呆然と窓の外に目を向ける。
庭園の木陰のベンチに座り、微笑み合っているルイとシェイラが見えた。

……どうして。
双子なのにこうも違うのか。

僕の心が、体が、嫉妬する醜い気持ちに支配される。
クレアと恋人同士の手紙の送り主に、僕の大好きなルイに!

今日はクレアと話をできそうもない。
僕はクレアに会わず、ルイにも何も言わず、そのままひとりでクスフォード家へと帰った。
泣きそうな酷い顔をして。



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