転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
ルカは出逢った頃より背も高くなり、とても格好良くなった。
切れ長のグレーの瞳で優しく微笑んでくれる。
『クレア』と呼んでくれる声も好き。
エスコートしてくれる時にルカの綺麗な手が触れる。
そのたびにドキドキするわ。
でもその瞳が見ているのは…。
ツキリと胸が痛くなる。

それに、マリアンヌ様。
ふたりは否定していたけど、ルカは『マリア』って親しげに呼んでいる。
今でもあのふたりは仲がいい。

他にもルカに憧れているご令嬢達はたくさんいる。
もしルカに婚約者ができてしまったら私は……!

ルカに話しかけていた綺麗なご令嬢がいた。
ふたりは楽しそうに話をしていたわ。
……私なんて目が合うとそらされてしまうのに。
最近は特に目を合わせてくれないわ。
ダンスも踊ることはない。

数日間ルカに会えなかった時もあったわ。
「曲を作りたいからしばらく音楽室にいる」と言っていたけど、私と一緒にいたくなかったんだわ…。

机に移動して綺麗な緑色の手紙を手に取り、問いかける。

「どうしたらいいの…?」

いつも私を元気づけてくれる友達に手紙を書き始めた。
この悲しい気持ちをぶつけるように。

ふと、手が止まる。

「……ルカなんて……嫌いよ……」

手紙の上に涙がポタリと落ちた。



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