「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!

第7話 「先輩、お疲れ様です♡」5

 私、後輩クンこと城ヶ崎君のお家にまたまたやって来てしまいました。

 誘われままに流れに乗って着いてきてお家に上がってしまい、良かったんでしょうか。

 可愛いわんこ系男子の城ヶ崎君に、仕事で疲れて麻痺してたところで御飯を食べに行きましょうって言われまして。
 気づけば、うんって返事をしてしまっていました。

 私がうんって言った時のね、城ヶ崎君の嬉しそうな笑顔。
 そんな反応を見たら、私の残業の疲れもだいぶ吹き飛んじゃったの。

 なんか弱いんだよね、城ヶ崎君に頼まれてしまうと断れないの。
 潤んだ瞳、甘え上手な声。
 ついつい良いよって言ってしまう。
 ――はっ!
 もしやこれって。これが母性本能がくすぐられてるってことなの?

 二度目の城ヶ崎君ん家《ち》。
 うーん、緊張しちゃうなあ。

 明日はお休みだしってことで、話題のアニメ映画のレイトショーを見て、食事をしてから城ヶ崎君のお家に寄っています。

「先輩、改めてお疲れ様で〜す。はい、どうぞ」

 城ヶ崎君は弾けるような笑顔を添えて、冷え冷えのシャンパンを入れたグラスを私にくれた。
 城ヶ崎君はジンジャーエールを飲んでいる。

「ありがとう、お疲れ様」
「さっきの映画、良かったですね」
「うんうん、面白かった〜」
「三角関係な恋愛も絡んだミステリーがたまらなかったです」

 城ヶ崎君がソファに座る私の横に腰を落とすと、二人がけだからか体が密着してドキドキしちゃう。

 城ヶ崎くんが優しげな笑みを浮かべてる。

「これって普通にデートですよね? 野坂先輩」
「えっ? ああ、そっか。デートかも」
「デートかもじゃなくって、デートなんです。先輩、チューしても良いですか?」
「――っ! 城ヶ崎君、それはちょっと」
「ちぇっ、先輩にキスしたいなあ」
「キ、キスって……駄目だよ。『ちぇっ』とか言われましても、私困ります……。ふふっ。そういえば城ヶ崎君ってそれ口ぐせだよね」
「えっ、口ぐせかあ。もぉ、先輩が言わせてるんですよ」

 城ヶ崎君がふてくされている。
 むくれた顔、かわいいっ。
 城ヶ崎君が可愛いからちょっと意地悪したくなるなんて言ったら、怒られちゃうかな。

 くすくす、笑いが止まらない。

「なあに、笑ってるんですか。純粋な僕をからかって〜」
 
 城ヶ崎君が私のほっぺをつまんでくる。

 言ってる言葉の軽めのテンションより、城ヶ崎君の案外真剣な顔が私に向かってきて。

 私と城ヶ崎君の二人のあいだに変に甘い雰囲気が漂ってしまう。

「先輩、良いよね?」
「良いわけな……」

 駄目だよって言いたかったのに。
 城ヶ崎君の真っ直ぐ私を見てくる瞳の煌めきに負けて、私は目を閉じて受け身になってしまった。

 重なる唇がやわらかで熱くて。
 一度だけのキス。
 離すと、城ヶ崎君はじっと私を見つめてくる。

「ところで先輩」
「な、なあに?」
「誰かに、明日の日曜日にデートしようって誘われてませんでしたか?」
「ううっ、情報が相変わらず早いな、城ヶ崎君」
「社内にも友達、多いですからね僕。って前にも言いましたよね? 年頃の社員って皆そういうの好きだから、すぐに耳に入って来ちゃうんだな。ねえ、先輩。断った?」
「うーん。常盤社長だから断りづらくて。それにね、城ヶ崎君。社長はデートって言ってなかったよ?」
「デートじゃなかったら何なんですか? どんな目的の誘いなの? 日曜日に社長が部下を呼び出すだなんて。パワハラだ、プライバシーの侵害だ」
「そんな……。常盤社長、ただ私と親睦を深めたいって言ってたし。下心なんてないんじゃないかな〜」
「ええっ! 野坂先輩、本気で言ってます? あの人、あの口で言いましたよ、はっきりきっぱりと。先輩を伴侶にしたいって」
「は、伴侶〜!?」

 むくれてる。
 城ヶ崎君ががっつり頬を膨らませて、プンプンしてる。

「先輩は僕よりイケメン社長が良いんだ」
「そ、そんなことないよ」

 城ヶ崎君の腕が私を包むように抱きしめてくる。

「じゃあ、野坂先輩。僕を好きって言って? 僕だけが好きだって先輩に言って欲しいなあ」
「わわわっ、私! えっ、え〜っと」

 い、いけない。
 人肌が恋しいからか、城ヶ崎君の勢いに押されて流される〜。

 城ヶ崎君のことはたしかに好きな方だと思うけど。
 好きって言ってしまったら、お付き合いすることになってしまうと思う。
 私はもう社内恋愛はこりごりなのに〜。

 ドキドキしちゃう。
 密着した私と城ヶ崎君はゼロ距離です。
 きゃー、きゃーっ、恥ずかしいよ、城ヶ崎君に抱きしめられてます。

 第一ボタンを外したシャツの隙間からは彼の鎖骨が見える。
 上下する喉仏が男らしくて、無駄にドキドキ。
 振りほどけないな。
 密着した胸板が思ったより筋肉質なのを思い出す。
 だって城ヶ崎君って童顔で可愛い顔しててアイドルみたいなのに、触ると鍛えているのか腕や胸の筋肉が硬くて逞しいんだよね。
 甘々わんこ系男子なのに、不意に男らしくて力強さを知ると、きゅううんって私の胸が高鳴って疼いて苦しくて。

 城ヶ崎君の心臓の鼓動が聴こえる。
 さらにドキドキしちゃう。

 思わず吐息が漏れて、そんな自分にびっくりした。
 このまま城ヶ崎君になにもかも身を委ねてしまいそう。

「先輩、好きです。僕に先輩の素直な気持ちを本心を聞かせてください」
「城ヶ崎君……」

 しばらく沈黙があって。
 でも心地良い。
 私は城ヶ崎君のあったかい抱擁から逃れられなかった。

「野坂先輩は可愛くてずるい人だなあ」
「城ヶ崎君……」
「今日こそは僕と付き合うって言って?」

 城ヶ崎君の胸の中で埋《うず》もれるようにしていると、なんだか安心できて眠くなってきてしまいます。

「眠いの? 先輩。そんな可愛らしい蕩けた顔して。も〜、無防備だなあ。僕だって男なんですよ。分かってますか? 他の男にはそんな顔は見せちゃ駄目だからね」
「……うん」

 お酒も入ったからか仕事の疲れが出たからか、すごく眠いの。

「寝ていきます? 疲れたんですよね。ああ、そりゃあ疲れるよね。だって先輩は頑張り屋さんだもんな」
「ごめん、城ヶ崎君」
「謝らないで。良いんだよ、先輩。僕には甘えても」

 ふわふわと良い気持ち。
 城ヶ崎君がお姫様抱っこしてくれてる?

「僕が添い寝してあげる。……あっ、本格的に眠らないうちに家に連絡はして下さいねぇ。先輩、実家暮らしでしょ? 外泊したら家族の人が心配するよ」
「う〜ん」
「聞いてる? 先輩」
「……そうだね。妹にメール入れとく〜」

 妹の杏奈は機転が聞くし、私達姉妹は仲が良いからお互いに彼が出来た時とかは協力してる。

 私は城ヶ崎君にベッドに運ばれ、すぐに睡魔に誘われた。

   🌼

「あっ、朝? なんかよく眠れた」

 私は目が覚めた。
 気持ちいい目覚め……。ぐっすり眠れたなあ――って?

「じょ、城ヶ崎君っ!?」

(きゃーっ!)
 隣りには城ヶ崎君が眠っているではないですか。

 接近した童顔な城ヶ崎君の顔。
 まつげが長いな……って、そんな呑気なことを考えている場合ではな〜い。

 まだ朝じゃなかった。
 外は薄暗くて、夜明けが近いみたいだけど。

 城ヶ崎君にずっと腕枕をしてもらってたんだ。
 だから? よく眠れた、すっきりしてる。
 疲れが取れて、いつも重だるい頭も体も軽く感じる。

 わわっ、城ヶ崎君のこの腕に頭を載せてひと晩過ごしちゃったんだ。

 なんて贅沢な……、いやいや違うよ茜音しっかりしろ〜。
 城ヶ崎君とはキスだけだったはず。
 あれから――は?
 なにも間違いが起きなかったよね?
 ああ、もはやあっても良かったかも。
 だめだめだめ〜!
 茜音、誘惑に負けちゃ駄目だよ。いけないわ。
 社内恋愛ほど、厄介で面倒なことはないんだからっ。

 すーすー、穏やかで規則正しい城ヶ崎君の寝息が聴こえる。

 私は起きるのがもったいない気がして、このままこうしていたくなってて。

 城ヶ崎君の子供みたいにぐっすり寝ている顔が可愛くって、きゅんってした。
 尊いような神々しいような。
 まだ城ヶ崎君にくっついていよう。

「うーん。野坂先輩〜」

 寝言で呼ばれてドキッとする。

 あっ、私。かなり嬉しいかも。
 城ヶ崎君って、夢に出てくるぐらい寝言で私の名前を喋っちゃうぐらい考えてくれてる?
 私のことを本気で思ってくれているのかな。

 私は城ヶ崎君の腕枕に癒やされてしまう。

 また眠くなってきちゃったなあ。

 もう一度。
 お休みなさい。城ヶ崎君。

 起きたら腕枕のお礼に朝御飯を作ってあげるね。

 私はこっそり、城ヶ崎君のおでこにキスを落とした。

 ……自分から城ヶ崎君にチューしちゃった。

 誰にも内緒だよ、茜音。
 こんなこと誰にも言わないから。
 城ヶ崎君にだって内緒にしなくっちゃ。

「野坂せんぱ〜い♡……ムニャムニャ」
「……起きてないよね? 城ヶ崎君」
「ププッ。僕は起きてませんよ〜。野坂先輩、今度は口にチューしてくれて良いからね」
「じょ、城ヶ崎君、起きてるじゃない!」

 城ヶ崎君が後ろから抱きついてくる。
 ベッドの布団のなかで抱きしめられちゃう。

「このまま、このまま。起きないで? 先輩、まだまだ一緒に寝てようよ」
「うーん……」

 城ヶ崎君の甘えた声とお願いに弱いんだよなあ。

 私は瞳を閉じた。
 あったかい城ヶ崎君の添い寝、温もりが私をまたもや夢の世界に誘う。

「大好きな可愛い眠り姫。僕の腕の中でゆっくり休んでね」

 夢なのか、現実なのか。
 甘い甘〜い、ちょこっと、こっ恥ずかしいセリフの城ヶ崎君の声が耳元に聴こえていた。

 城ヶ崎君と甘々な毎日を過ごす恋人同士になるのも良いのかも……とか、思った幸せな気分の朝でした。
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