聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

「え…えぇと…」



喧嘩…じゃないよね、言い争ったりしてないし。



今のこの状況をなんて説明すればいいのかな…。



頭を抱える私に、斗真さんは「無理に話さなくてもいいよ」と言ってバイクにもう一度乗り込んだ。



「あ、でもこれだけは言わせて。女の子に夢中になってる紫呉は見たことないよ」




「へ…っ?な、なに言って…」



急に思ってもいないことを言われて、つい声が裏返ってしまう。



「ははっ、それだけ。じゃあねー。おやすみ!」



「あっ、ちょっと斗真さん!!」



言い逃げるように帰って行った斗真さんの、清々しい笑顔たるや。



「…ありがとう、斗真さん」



走り去っていく斗真さんのバイクを眺めながら、ぽつりと呟く。



そして思い切り背伸びをしてから、深く深呼吸をした。



夜の冷たい空気が肺に流れ込んでいくこの感じは、嫌いじゃない。



俄然やる気が湧いてくる気がする。



「…うん、大丈夫」



もう、不安がったり怖がったりしない。



紫呉さんがどんなに私を突き放そうとしても、離れてあげません。



だって、貴方が大好きで大好きで仕方がなくて。



もう、離れられないくらいに手遅れなんです。
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