【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
「っふ……」


 思い出して、つい口元が緩む。

 だって、挨拶をした隣の席の浜田さんは俺以上に緊張してて言葉がおかしくなってたから……。

 おかしくて、つい笑って……緊張がほぐれたんだ。

 あのときから、俺にとって浜田さんはちょっと特別な人になった。


「力のことも、黙っててくれたしな」


 口から手を離し、昨日授業中にうっかりやってしまったことを思い出す。

 シャーペンを落としてしまって、思わず念動力(ねんどうりょく)を使ってしまった。

 意志の力で物を動かせる超能力。

 俺の――俺たち(・・)の秘密の力。


 授業中だったし、床に落ちた音もしてないから気付かれないと思った。

 でも、浜田さんと直後に目が合って見られてしまったんだって気付く。

 思わずナイショのジェスチャーをして口パクで“ヒミツ”って言ったけど、仲の良い友達とかには話してしまうんじゃないかと思った。

 でも誰にも話している様子はないし、変に追及して来たりもない。

 初めに感じたように、浜田さんは優しくてふわふわしてる、マシュマロみたいな女の子なんだなって思った。
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