無自覚美少女のリアル
「何で?むしろ僕は、スカウトされたのが初めてってことに驚いたけど」

「あ…きっと、髪型、素敵に仕上げてくれたからですよね。どうもありがとう」

「いやいや!それもあったら美容師としては嬉しいけど、髪型だけじゃスカウトされないよ!」

その後も、日美子は幾つもの芸能事務所からスカウトされたが、彼女はそういう仕事に関心がないので、断り続けていた。

「そっか。スカウト全部断っちゃったんだね。でも、僕としては少し安心した」

美容師はそう言う。

「どうして?」

「それは…やっぱり、日美子ちゃんが、うんと遠くへ行ってしまうような気がするから」

少し照れたように言う美容師に向かって、

「私、遠くになんて行きませんよ?留学したいとか、そういう希望も特にないし」

日美子は、やっと自分のビジュアルを受け入れることが出来るようになったが、密かに自分に向けられた好意に対しては、まだまだ鈍感なのであった。



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