溺愛甘々トライアングル
第二話



     ☆第2話☆




〇一か月後。


朝妃(満開の桜が散り、新緑の木々が煌めいています。相変わらず勇大(ゆうだい)は、女嫌いの魔王様です)



〇新緑の並木道。

朝妃(あさひ)と歩く勇大に、スマホをもって駆け寄る女子達。



女子達「勇大様、一緒に写真撮ってもらえませんか?」

勇大 「無理」



〇教室。

女子が手作りカップケーキをもって、席に座る勇大に迫る。

自分の席に座り、様子を見ている朝妃。



女子達「勇大くん、カップケーキ作ったんだけど食べて」

勇大 「いらない。他の奴にあげて」



朝妃(それなのに……)



不愛想に女子を追い払った勇大が、そのまま朝妃の席まで来る。

椅子に座ったまま見上げる朝妃。



勇大「お腹すいた。女子は調理実習で、カップケーキ作ったんだろ? 食べたいんだけど」

朝妃「さっき断ってたよね?」

勇大「(気まずそうな顔で)……ああ……それな」



顔を赤らめている勇大。

恥ずかしさをごまかすように、頭の後ろをかいている。

初めて見る勇大の表情に、朝妃は「ん?」



勇大「朝妃以外の女が作ったものは……俺の舌が拒絶するんだよ……」



かぁぁぁと顔が赤くなる朝妃。

勇大に背を向け、朝妃は自分の頬に両手を当て感激する。



朝妃(嬉しい/// 彼女になりたいなんて、もう望まない。特別な幼馴染で、じゅうぶん幸せだもん)


朝妃「食べていいよ」



朝妃からカップケーキを奪い取り、ガツガツ食べている勇大。

朝妃は机に頬杖をつき、その様子を満足そうに見つめている。






〇数日後。放課後の図書室。

本を読んでいた朝妃。



朝妃「そろそろ帰ろうっと」


本をパタリ。


朝妃(あっ。帰る前に、部活中の勇大を見に行っちゃおう)


ルンルン気分で朝妃はグラウンドに。




〇グラウンド。

サッカー部のみんなが練習をしている。

シュート練習をしている勇大を見て、うっとりの朝妃。



朝妃(勇大は、サッカーしてる時が一番かっこいいな。ゲームしてる時のダラダラ勇大も好きだけど)



朝妃に気づいた勇大が、朝妃のところまでかけてくる。



朝妃「勇大、部活お疲れ~」

勇大「まだ帰ってなかったのかよ?」


ドキッとする朝妃。

朝妃(言えない。勇大を見に来たなんて)



朝妃「帰る前に確認しとこうと思って」

勇大「ん?」

朝妃「勇大の家に行くの、夜の8時くらいでいい?」

勇大「……」

朝妃「どうかした? 予定でも入った?」



気まずそうに、視線を地面に逃がす勇大。



勇大「俺ん家に……来るな……」

朝妃「えっ? ゲームやる約束してたじゃん。木曜の夜ならいいって」

勇大「そんな約束はしてない。絶対に来るな!」

朝妃「なんで? あっ、この前私にゲームで負けたからでしょ?」

勇大「違うし」

朝妃「部屋の中に、私に見せたくないものでもあるとか?」

勇大「別にない」

朝妃「じゃあなんで?」



真っ赤な顔を隠すように手のひらで口元を隠し、そっぽを向く勇大。



勇大「……できたんだよ」

朝妃「?」



勇大「……好きな……女」




朝妃「・ ・ ・えっ?」



ショックで固まる朝妃。

脳内フリーズ。放心状態。



朝妃「相手は誰? 私の知ってる人?」

勇大「オマエに教える義理はない」

朝妃「幼馴染でしょ。親友でしょ!」

勇大「朝妃だって、好きな男の話なんて一度もしたことないくせに」

朝妃「好きな人ができたことないからだよ」

勇大「うそだね。オマエこそ好きな相手は誰だよ?」

朝妃「だからっ……」

勇大「恋の悩みを抱えてますみたいな顔で、ため息ついてる時があるだろうが」

朝妃(あっ……)



予想外の指摘に、朝妃は言葉に詰まる。



朝妃(……勇大って、意外と鋭いんだ。好きな人が勇大だってバレてないみたいだけど)



朝妃「アハハ~ 勇大の思い違いだってば」

勇大「素直に教えろ! お前の好きな男は誰?」

朝妃「……」

勇大「クラスの奴? 下級生?」

朝妃「……」

勇大「もしかして、オマエを王子様ってあがめてる女子の中にいるとか?」



朝妃(もう隠し通せそうもない。この際言っちゃおっかな。幼稚園のころから、勇大のことが大好きだったって」



朝妃「えっとね……私の……好きな人は……」



勇気が出なくて、勇大に告白できない朝妃。その時……



麗華「勇大せんぱ~い!」



笑顔で手を振りながら、勇大のところに走ってきたのは、ジャージ姿の美少女。

小林 麗華(れいか)(高2)

腰まで伸びたふんわりカールの髪を揺らし、勇大に微笑んでいる。



麗華「勇大先輩、忘れてませんか?」

勇大「何?」

麗華「ひどい~ やっぱり忘れてるじゃないですか。朝妃様とお話させてくれるって、勇大先輩のお部屋にお邪魔した時に、約束してくれたのに」


朝妃(勇大が女子を自分の部屋に入れた?? しかもこんな美少女を?)

ショックすぎる朝妃。



勇大「そういえばそうだったな。朝妃、こいつはサッカー部のマネージャーの麗華。俺らの一個下」


朝妃(れいか? 勇大が私以外の女の子を呼び捨てにしたの……初めて聞いた……)


麗華「高2の小林麗華です。いつも勇大先輩がお世話になってます」

勇大「朝妃に世話をしてもらった過去はない」

麗華「私、勇大先輩にいつも言ってますよね? 感謝は大事だって」

勇大「オマエ生意気」



ピクリとも笑わない不愛想な勇大の返事も何のその。

麗華は天使笑顔で、勇大に微笑み続けている。



朝妃(勇大先輩がお世話になってます? そんな親しい関係なの? 麗華ちゃんは不愛想な勇大の相手も慣れているみたいだし……二人は付き合ってるんだ……)



顔面蒼白の朝妃。

現実を受け止められない。悔しくて唇をかみしめる。



朝妃(勇大のバカ。女嫌いって言ってたじゃん。この世に女は、私だけがいればいいって……私だけが特別なら、一生、幼馴染のままでもいいと思ったのに……)



麗華「私のクラスにも、朝妃様ファンの女子がたくさんいるんですよ。王子様とお話したって、明日みんなに自慢しちゃおうっと」


朝妃(可愛い子。笑った顔なんて、本物の天使だ……それに引き換え私は、見た目も性格も男の子。可愛さのかけらもない)



失恋して、苦しくてたまらない朝妃。

勇大が大好きだってバレたくなくて、無理やり笑顔を作る。



朝妃「サッカーの邪魔してごめんね。じゃあ、練習頑張って」



笑顔キープの限界。

勇大と麗華に背を向け、苦しそうな顔になる朝妃。



朝妃(やばい……涙こぼれちゃいそう……)




〇朝妃が失恋した様子を目撃していた、美少女より可愛い王子様。

星月(ほしづき) 璃音(りと)(高3・朝妃&勇大と隣のクラス)

可愛いもの大好きと公表している大人気キュート男子。

バックに可愛いウサギのモフモフマスコットをぶら下げている。



失恋で傷づく朝妃を見て、嬉しそうにニヤついている。



璃音(僕にも、恋のチャンス到~来!)










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