アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「奥様、迷惑ではありません。奥様に仕えさせていただいていることじたい、わたしにとって意義のあることなのです」

 クレアは、握りこぶしをつくってまで力説している。

 クレア、すごいわ。

 これぞ「メイドの鑑」よね。

 ここまでメイドの役に徹するだなんて、ますます尊敬してしまう。

 偽りの気持ちだということがわかっているのに、あまりの演技力に誤解してしまうところだった。

「奥様。それで、扉の前までうかがったのですが……」

 なんてこと。クレア。あなた、まだその話をするの? 

「ノックをするのをはばかられました。はしたないことですが、いろいろ想像してしまいまして」
「そうでしょうね」

 おもわず、めちゃくちゃクールに同意してしまった。

 だって、そうでしょう? 夫婦の役ということを省いたとしても、一応男女が同じ寝室にいるのだから。
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