アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「母上」

 その瞬間、ヘンリーとノーラがわたしの前まで走って来た。

 彼と目が合った瞬間、二人はクルリと背を向け、近づいてきている叔父を睨みつけた。

 彼らは両腕を広げ、叔父を通せんぼしている。

「なんだ、このガキどもは」
「ぼくは、ヘンリー・アッシュフィールド。次期公爵だ。そして、いまは父にかわって母を守る息子だ」

 いまのヘンリーの声は、甲高いというよりかは凛としたという表現がぴったりだった。
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