キミの隣のとなり
校門をくぐり抜け、下足ホールへ向けて三人で歩いていく。

「ま、高橋(たかはし)さん家の由花(ゆか)なら大丈夫っしょ。社交的だし、八方美人だしー」

「ちょっと司、それけなしてない?」

ワザと司を睨んだ私を横目に、琴乃が司の頬を人差し指と親指で摘んだ。

「こら、司っ、由花のこと悪く言ったら許さないんだから」

「痛って、琴乃怒んなって」

司がふざけながらも、頬を摘んでいる琴乃の掌を掴むと左手で握った。

「ちょっと、何で手繋ぐのよ、由花も居るのに恥ずかしいっ」

「いいじゃん、俺と琴乃のこと学校中知ってんだし」

「そだねー、もう今更だし。琴乃いいんじゃない?司も朝からごちそーさま」

私は顔に出さないように、唇を持ち上げながら二人を茶化す。

「おう、由花、またごちそうするな」

「司のバカ。いらないよっ」

司が琴乃と繋いだ掌を私に向けて挙げるとニッと嬉しそうに歯を見せた。

いつも登校は三人一緒だが、帰り道は恋人同士の二人に遠慮して、隣のクラスの私は一人で帰宅している。クラスが二人とは別でちょうど良かった。二人に気を使うことも気兼ねすることもなく一人でのんびり帰れるから。

「ということで、由花また明日なー」

「はーい」

琴乃が恥ずかしそうにしながらも、私に向かって、「また明日ね」と頬を染めて言うと司に手を引かれながら隣の教室へと入っていった。
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