アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

ひとりの夜は

 部屋に戻った私は、シャワーを浴びて、いつも通りお肌の手入れをした。そして、久しぶりに定番のタンガにバスローブの気軽な格好で、冷蔵庫を開ける。
 今日はビールの気分じゃなくて、ミネラルウォーターを取り出し、リビングのソファーに腰を下ろす。

「問題が片付いても、大都がしばらく帰って来れないのはしょうがない」

 なんとなく寂しくてTVをつける。でも、いくらザッピングしても見たい番組がみつけられない。
 細く息を吐き出して、TVを消した。ソファーの上で膝を抱えて、手持ちぶさたな私は、スマホに手を伸ばす。
 
 スマホの画面に表示された時刻は、0時を過ぎている。
 大都の声を聞きたいと思っていても、もう眠ってしまっているかもしれない時刻だ。
 甘え上手な女だったら、こんなとき「ごめんね。声が聞きたくて電話しちゃった。迷惑だった?」と言えば「そんなことないよ」と返してもらい、上手く話し始めることが出来るのだろう。
 でも、自分に甘えた声を出すのは無理だ。こんなときホント可愛くない自分の性格が嫌になる。
 メッセージアプリを立ち上げ、ポチポチと入力を始める。

『今日は、いろいろあったけれど、どうにかなりそうで安心しました。迷惑かけてごめんなさい。ツアー頑張ってね。おやすみなさい』

 我ながら、色気の無い内容だと思いながら、送信ボタンを押した。
 ひとりで居るのは慣れていて、いままでなんとも思わなかった。それなのに、ふたりで居るのが日常になった今は、ひとりが酷く心もとない。
 ふと、窓の外を見ると朧月が浮かんでいる。

「寂しいな……」

 そうつぶやいくと、スマホが着信で振動し始めた。
 画面には「大都」という文字が浮かぶ。
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