アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

参戦します!

 札幌から始まったBACKSTAGEのツアーは、仙台、名古屋、大阪、福岡を経て、いよいよファイナルを東京で迎えようとしている。
 もちろん、その合間に東京に戻って、TV出演や雑誌の取材などをこなすというスケジュール。
 でも、大都はスクープ写真の件以降、用心も兼ねてマンションには帰って来ていない。かれこれ1か月半も会えないままだ。

 メッセージや通話をしているけれど、毎日交わしていた「おはよう」や「おやすみ」「いってらっしゃい」「おかえり」などの挨拶がないのは、ふとした瞬間、切なくなる。
 
 エステサロンmodération 赤坂店の奥にある事務所にあるデスクに向かっていた私は、「はぁ~」と幸せが思いっきり逃げていくような特大のため息を吐き出して、パソコンから顔を上げた。
 ふと目に映った壁掛時計の針は12時42分を指している。

「お昼ごはんにするかぁ」

 と言っても、食欲が無いから朝買ったサンドウィッチのミックスパックの残りでいいかな、なんて考えていた。
 飲み物が欲しくて、隣の休憩室へ足を向ける。
 休憩室では、お昼休み中の松本さんと福田さんが、テンション高めにキャッキャウフフな状態だ。

「おつかれさま、ずいぶん楽しそうね」

「おつかれさまです。今日、わたしたち早番で上がらせてもらった後、BACKSTAGEのファイナル参戦なんです。生HIROTOです!」

「あ、オーナーも一緒にどうですか? 指定席4枚で取ったんですけど、仲間のひとりが体調不良で来れなくなっちゃったんで、チケットが1枚余っているんです。生HIROTOが見れますよ」
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