アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 診察が終わり、処置室に呼ばれた。
 そこでは看護師さんが、検査のための採血をして、次に人工中絶についての説明が始まる。
 さっき、「まだ悩んでいます」と言った自分を恨めしく思いながら説明を訊いた。現在、私は妊娠10週だ。12週以降になると処置も大変になるから、あきらめるなら一日も早くした方が良いと言われてしまった。
 そして、人工中絶の同意書が渡される。パートナーの記入欄をじっと見つめていると、看護師さんに気を遣われてしまう。

「事情があるなら相談に乗りますよ」

「ありがとうございます。でも、自分のことですから……」

 予定外の妊娠に心が追い付いていなかったけれど、診断をもらったことで、しっかりと受けとめることが出来た。
 この先の人生を左右する選択に、向き合わなければならない。

「ありがとうございました」と処置室を出て受付に行き会計をした。すると、診察券と一緒に超音波検査のとき見た白黒の映像写真を渡される。
 それを手にした瞬間、思わず「あっ……」と声が漏れた。

自分のお腹の中に宿った小さな命。
白黒の超音波写真に写る、大都と私の赤ちゃん。
愛おしいと言う感情が胸にあふれる。

いままで結婚する気が無く、自分が子供を授かるなんて考えたことが無かった。でも、大好きな大都との子供。それを自分の意思で葬り去るなんて、恐ろしいまねはできやしない。絶対に無理だ。

 



 
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