アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
大都が事務所との契約更新を延長しない表向きの理由に、父親との約束としていたことに驚いた。これも私を守るために大都とその父親である芳明が考えてくれたのだろう。
 契約更新をしないと公式発表されたことで、打ちひしがれるファンの姿に申し訳なさを感じたが、大都の私への思いやりを考えると余計なことなど語れるはずもない。

「確かに売れているのにやめるのは、惜しいと思う。けど、HIROTOが決めたならそれがどんな道であれ応援してあげたい」

 これは私の本心だ。

「そうですね。推しが決めたことだから、応援するしかなくてしょうがないんですけど、それが無性に歯がゆいんです」

 と、松本さんはあきらめきれない様子だ。それに呼応するように福田さんが話し出す。

「でも、芸能活動って難しいですよね。いまの人気が3年後も5年後も継続するとは限らないし、俳優とかに上手くシフトできる人ばかりじゃないから、まあ、HIROTOなら俳優としてもやっていけると思うけど、本気で将来を考えたら他の道を選択するのもありですよね」

「わたし……推しが辞めるのショックですけど、生きていてくれるだけでいいです。あと半年は全力で推させてもらいます。推しは推せるときに全力で推す!これが一番です!」

 宮城さんが熱っぽく語る言葉に松本さんも福田さんも大きくうなずいた。
さっきまでの打ちひしがれていた姿は何処へやら、3人に元気が戻っている。

「推しは推せるときに全力で推す! 残りのライブも制覇します!」

 高らかに宣言されて、私はハッと気が付く。
 シフト管理が大変だ……。
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