アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 この前の会話の中で、大都との関係を終わりにするとか、勘違いで彼氏だったとか、散々言ってしまったから、心配させてしまったのだろう。

 それにしても「別れたのか」ではなく「続いているか」と聞いてくれるのは正人の思いやりだとわかり、ふっ、と思わず笑みがこぼれる。

「お騒がせしましたけど、おかげさまで、まだお付き合いは継続中です」

「……だろうな。綺麗になって、幸せそうに見えるよ」

「ありがとう。そうね、この幸せが、いつまで続くかわからないけれど、いつまでも続くように努力して行こうと思っているの」

 私の言葉を聞いて、正人は宵闇に包まれた空を仰ぎつぶやいた。

「会わない間にずいぶん変わったな」

「そう? そうね、変わったのかも」

誰からも愛され無いと、 心の奥でいつも寂しさを抱えていた。けれど、大都の深い愛に包まれ、母親からも愛されていたのがわかった。

私も愛することの素晴らしさを知ることができた。
小さな命が宿るお腹へ、そっと手をあてる。
いまは、心が愛で満たされている。
寂しさで不安定だった頃の自分では、感じられなかった温かな感情だ。

「最近、大切なことに気付けて、そのおかげで精神面でも大人になれたのかも知れない。先生とお付き合いしていたときは、自分のことで精一杯で、今考えてもわがままな子供でした」
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