アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
デスクの端に置かれた電話の外線の呼び出し音だ。
 受付をした従業員の取次内容は、関東スポーツの斎藤という人からの問い合わせらしい。
 関東スポーツと聞いて嫌な予感が走る。
 その印象は、駅売りの夕刊紙でゴシップ中心、見出しは派手で折り曲げられた紙面に「~か?」と添えれば、真実ではなく、ただの疑惑というか憶測記事。
 そう、真実よりも面白さや話題性が重視の夕刊紙なのだ。

『初めまして、関東スポーツの斎藤と申します。実はですね、BACKSTAGEのHIROTOさんにアナタが抱えられた写真が持ち込まれました。単刀直入にお伺いしますがHIROTOさんとのご関係は?』

 私が大都に抱えられた写真⁉

 それを聞いて思い当たるのは、週刊ScoopOneの茂木に撮られた写真だ。
 あのとき、記事をつぶされ、その挙句週刊ScoopOneから追われた茂木が腹いせに、関東スポーツに売り込んだのだろう。
 大都が事務所との契約更新をしないと、話題になっている今が売り込むチャンスになったのだ。
 そして、写真がいつ撮影されたのかなど関係なく、話題性を買われて採用されたのだろう。

 いったいどうしたらいいの? 

 心の動揺を悟られないように呼吸を整えてから、毅然とした態度で返答する。
 
「申し訳ございませんが、人違いだと思います。失礼します」

強気で言ってみたものの、受話器を置いた手は震えていた。
 

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