アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

呪いをかけてもいいですか?

 ぼそぼそと、誰かの話し声で意識が引き戻される。
 ゆっくりと瞼を開いた。見たことのない天井、視線をずらすとスタンドに掛かった点滴の袋がぶらさがっている。その点滴から伸びた管は私の腕に繋がれていた。

「あっ、目が覚めたのね。心配したわ」

 私の様子に気付いた母が、心配そうに覗き込む。そして、母と話しをしていた看護師さんがベッドの横に立ち、テキパキと脈などを測ってくれている。
 
 どう考えても病院のベッドの上だ。もともと、病院に行く予定だったけれど、エレベーターを降りてからの記憶が抜けている。それに、病院にはひとりで行くつもりだったから、母が居るのも不思議だ。

「私……どうしたのかしら」

「急に倒れて、救急で運ばれたのよ。お店の子が一緒のときで良かったわ」

 病院に行こうとエレベーターを降りたところで福田さんに会った。そのあと、急に体が重くなったのを思い出して、ハッとした。

「赤ちゃん……」

 私のつぶやく声を聞いた看護師さんは、にっこりと微笑みながら目だけは真剣な表情を向ける。

「赤ちゃん、頑張っていますよ。ただ、無理は禁物です。2.3日入院して、その後最低でも1週間は自宅でゆっくりしてください」

 診断は切迫流産。とにかく安静にしていなければいけないらしい。
スクープのせいで、お店が大変なときに、1週間も仕事を休むのはツラいなどと、この期に及んで考えてしまう。
 不意に、私の手に母の温かな手が重なった。

「朝、元気な姿を見送ったばかりなのに、緊急搬送されたって知らせを受けたときには驚いたわ」

「心配させてごめんなさい」

「無事でよかった。ヒロくんにも知らせたけど、例の件で外せない仕事が入っているらしいの」

「トーク番組の生放送に出るみたい」

 それを聞いた母は深く頷き、うれしそうに目を細める。

「じゃあ、TVのついている個室にしたのは正解ね。あなたは、何も心配しないでゆっくりしてなさい。人に任せることを覚えるのも経営者としては必要なことよ」
 

 
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