アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 窓の外が、茜色に染まり始める。
街が目覚め、緩やかに動き出した。
 新たな一日の始まりだ。

 茜色が薄くなり、やがて乳白色へ変わる空を背景に、そびえ立つ東京タワーをふたりで眺めた。
 私は、背中に大都の温かみを感じて、穏やかな笑みがこぼれる。

「きれいだな」

 そう言って、大都の大きな手は、自然と私の大きくなったお腹をさすっていた。

「もう少しで、この景色を三人で見るようになるのね」

「ああ、楽しみだな」

「今日、がんばってね。TVの前で応援してる」

「お腹の子と一緒に応援してくれるんだろ」

 お腹の子の性別は、産まれてからの楽しみにと、お医者様にはヒミツにしてもらってる。
 何故なら、男の子でも女の子でも、大都の子なら可愛いに決まっているからだ。
 
 私は大都へ向き直り、大都にお腹を押し付けるように抱き着いた。

「いま、動いているのわかる?」

「なかなか、やんちゃだな」

「きっと、パパのマネしてお腹の中でダンスしているのよ」 

 そう言って、顔を上げた。すると、大都と私では、身長差で自然と上目づかいになる。
 だんだんと大都の顔が近づき、息のかかる距離で囁く。

「由香里、愛してる」

 
【終わり】


 
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