アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
【おまけ】もうすぐです!
「いたたっ」
だんだんと痛みの間隔が短くなって来ている。
それでも、まだ、15分間隔だ。
由香里は瞼を強く閉じ、右手をギュッと握り込む。
それでもシワが寄るのが気になるのか、左手は眉間を揉んでいた。
「その痛み分け合えたらいいのに……。ふたりの子供なのに力になれなくて、ごめん」
大都は、少しでも痛みが軽くなるように由香里の腰をさすりながら、心配することしか出来ない。
陣痛は、寄せては返す波のように、お腹が引き攣れ、骨盤がミシミシと動くような痛みの時間と、その痛みがスッと引く時間が繰り返される。
由香里は、額に脂汗を浮かせ、「ふぅ、ふぅ」と深い呼吸で痛みに耐えていた。
それが治まると、心配顔の大都へ、由香里は大丈夫よと伝えるようにニコッと微笑む。
「一緒に居てくれるだけで十分だから、謝らないで」
「ん、わかった」
そう口にしたが、 まだ、他に出来ることはないのかと、大都は視線を彷徨わせる。そんな大都の広い胸にポスンと由香里は背中を預け、ふふっと思い出し笑いを浮かべた。
「私、大都と出会うまで、自分が妊娠するなんて考えたことも無かったの。でもね、いざ妊娠してみると、お腹の中で日々成長するこの子が愛おしくて堪らないの。自分がこんなに子供好きだなんて知らなかった。この子にもうすぐ会えるのよね」
穏やかに話しながら、お腹をさする由香里の姿が大都には尊く感じられた。
「由香里……」
「自分のお腹の中で、子供が動き成長しているのを感じられるのは、出産の痛みと引き換えに与えられた特権なのかもね」
母となる女性は偉大だ。お腹の子供のためなら不安を乗り越え、痛みさえも超越し、新たなる命をこの世に贈り出す。
大都にとって、由香里は長年の憧れでもあり、誰よりも大切にしたい人。そして、自分との子供を産んでくれるかけがえのない存在だ。
せめて、少しでも由香里の力になれるような自分でありたいと願う。
「子供が産まれたら、俺も出来る限り協力するから、大変なことも楽しいことも、ふたりで分け合っていこう」
「そうね。この子、お腹の中で元気過ぎるもの。女の子ならオテンバ、男の子ならヤンチャになるわ。大変で楽しい子育てになりそうね」
肩の横で手を握り、小さくガッツポーズをしながら、由香里は瞳を輝かせ、もうすぐ会える我が子を思う。
陣痛が始まり、出産が近づいている今でも、お腹の子供の胎動が感じられた。
狭い産道を通るために赤ちゃんが自分で体制を整えているのかも知れない。そう考えると、骨盤の内側から外側へ引き攣れる痛みも仕方のないように思えた。
しかし、仕方ないと頭で理解してみても、痛いものは、やはり痛かった。
再び、お腹が張り出し、骨盤がミシミシと軋み始める。どれくらい痛いのか考えて見ても、今まで経験をしたことのない痛さだ。例えるなら生理痛の100倍ぐらいでも追いつかない痛みだ。
「うっ、ううぅ」
テーブルの上のメモに書かれた時間。15分おきだった間隔が、10分おきと短くなっている。
「由香里、病院に連絡するからな」
「うっ……うん」
返事をするのもやっとの状態。
「痛い」という言葉だけで思考が埋め尽くされる。
いくら出産をするための器官だとしても、小さな新生児とはいえ、普段なら絶対にあり得ない大きさの、人ひとりが通り抜けるのだ。
そんなの痛いに決まっている!
出産のときの例え話で、”鼻からスイカを出す”と言うのがあるけど、いまいちリアリティに欠けて、想像しづらい。
「うっ、うー、うぅ、」
うめき声をあげ、合間に肩で息をする。病院でラマーズ法なる呼吸法を習ったけれど、そんなのやっている余裕なんて無かった。
「マタニティータクシーが着いたって、コンシェルジュから連絡が来たよ」
「ありがとう。やっと病院に行けるのね」
ふうっと大きく息を吐き出して、痛みが引いたタイミングで身を起こしたが、重心バランスが悪いのかヨロヨロと足元が心許ない。
とてもひとりで歩けそうも無い状態に、大都はひょいと由香里を抱き上げる。
「肩に手をまわせる?」
「うん」
今回ばかりは、素直にうなずいて大都の肩に手をまわす。
大都はふわりと微笑んで、自分の額を由香里の額へコツンと合わせた。
そして、息のかかる距離でささやく。
「後、少しで会えるんだな」
「そうだね。後、少しだね」
「由香里、愛してるよ」
だんだんと痛みの間隔が短くなって来ている。
それでも、まだ、15分間隔だ。
由香里は瞼を強く閉じ、右手をギュッと握り込む。
それでもシワが寄るのが気になるのか、左手は眉間を揉んでいた。
「その痛み分け合えたらいいのに……。ふたりの子供なのに力になれなくて、ごめん」
大都は、少しでも痛みが軽くなるように由香里の腰をさすりながら、心配することしか出来ない。
陣痛は、寄せては返す波のように、お腹が引き攣れ、骨盤がミシミシと動くような痛みの時間と、その痛みがスッと引く時間が繰り返される。
由香里は、額に脂汗を浮かせ、「ふぅ、ふぅ」と深い呼吸で痛みに耐えていた。
それが治まると、心配顔の大都へ、由香里は大丈夫よと伝えるようにニコッと微笑む。
「一緒に居てくれるだけで十分だから、謝らないで」
「ん、わかった」
そう口にしたが、 まだ、他に出来ることはないのかと、大都は視線を彷徨わせる。そんな大都の広い胸にポスンと由香里は背中を預け、ふふっと思い出し笑いを浮かべた。
「私、大都と出会うまで、自分が妊娠するなんて考えたことも無かったの。でもね、いざ妊娠してみると、お腹の中で日々成長するこの子が愛おしくて堪らないの。自分がこんなに子供好きだなんて知らなかった。この子にもうすぐ会えるのよね」
穏やかに話しながら、お腹をさする由香里の姿が大都には尊く感じられた。
「由香里……」
「自分のお腹の中で、子供が動き成長しているのを感じられるのは、出産の痛みと引き換えに与えられた特権なのかもね」
母となる女性は偉大だ。お腹の子供のためなら不安を乗り越え、痛みさえも超越し、新たなる命をこの世に贈り出す。
大都にとって、由香里は長年の憧れでもあり、誰よりも大切にしたい人。そして、自分との子供を産んでくれるかけがえのない存在だ。
せめて、少しでも由香里の力になれるような自分でありたいと願う。
「子供が産まれたら、俺も出来る限り協力するから、大変なことも楽しいことも、ふたりで分け合っていこう」
「そうね。この子、お腹の中で元気過ぎるもの。女の子ならオテンバ、男の子ならヤンチャになるわ。大変で楽しい子育てになりそうね」
肩の横で手を握り、小さくガッツポーズをしながら、由香里は瞳を輝かせ、もうすぐ会える我が子を思う。
陣痛が始まり、出産が近づいている今でも、お腹の子供の胎動が感じられた。
狭い産道を通るために赤ちゃんが自分で体制を整えているのかも知れない。そう考えると、骨盤の内側から外側へ引き攣れる痛みも仕方のないように思えた。
しかし、仕方ないと頭で理解してみても、痛いものは、やはり痛かった。
再び、お腹が張り出し、骨盤がミシミシと軋み始める。どれくらい痛いのか考えて見ても、今まで経験をしたことのない痛さだ。例えるなら生理痛の100倍ぐらいでも追いつかない痛みだ。
「うっ、ううぅ」
テーブルの上のメモに書かれた時間。15分おきだった間隔が、10分おきと短くなっている。
「由香里、病院に連絡するからな」
「うっ……うん」
返事をするのもやっとの状態。
「痛い」という言葉だけで思考が埋め尽くされる。
いくら出産をするための器官だとしても、小さな新生児とはいえ、普段なら絶対にあり得ない大きさの、人ひとりが通り抜けるのだ。
そんなの痛いに決まっている!
出産のときの例え話で、”鼻からスイカを出す”と言うのがあるけど、いまいちリアリティに欠けて、想像しづらい。
「うっ、うー、うぅ、」
うめき声をあげ、合間に肩で息をする。病院でラマーズ法なる呼吸法を習ったけれど、そんなのやっている余裕なんて無かった。
「マタニティータクシーが着いたって、コンシェルジュから連絡が来たよ」
「ありがとう。やっと病院に行けるのね」
ふうっと大きく息を吐き出して、痛みが引いたタイミングで身を起こしたが、重心バランスが悪いのかヨロヨロと足元が心許ない。
とてもひとりで歩けそうも無い状態に、大都はひょいと由香里を抱き上げる。
「肩に手をまわせる?」
「うん」
今回ばかりは、素直にうなずいて大都の肩に手をまわす。
大都はふわりと微笑んで、自分の額を由香里の額へコツンと合わせた。
そして、息のかかる距離でささやく。
「後、少しで会えるんだな」
「そうだね。後、少しだね」
「由香里、愛してるよ」