アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
これは、大都が由香里さんちに転がり込んだ頃のお話。(北川さん視点です)



「ご指名頂きありがとうございます。本日の施術を担当させて頂きます。北川賢一です」

「北川さん、堅苦しい挨拶は抜きで」

  原宿にあるヘアサロン[healing]。そのVIP専用の個室を予約したお客様は、今、人気急上昇中のアイドルグループBACKSTAGEのHIROTOだ。
 革のジャケットを脱いで、白のTシャツに黒のデニムにドレープエンジニアブーツというシンプルな姿なのに、バランスの良い体躯がそれを引き立たせている。
 長いまつ毛に縁どられたアーモンドアイが、色々な表情を魅せ、芸能人ならではのオーラを放っていた。

ここのオーナーと懇意にしているらしく、数年前から常連だと聞いている。
HIROTOの担当をしていた店長がケガをしてしまい。代打で担当をして以来、指名してくれるようになった。店長の誘いでこの店に入った自分として、お得意様を奪ったようで少し複雑だ。

「この髪の色、評判いいんだ。でも、同じ銀髪だけど北川さんの髪の色とも微妙に違って見えるよね」

 ツーブロックマッシュスタイルをシルバー系のハイトーンカラーに染め上げた髪はHIROTOに良く似合っていた。

「HIROTOさんの髪は、少し青みがかった銀髪で、僕のは、グリーン系だからかな? 遠目で見ればふたりとも銀髪だよね」

「身長も同じぐらいだから、こんど何かあったら北川さんに影武者、頼もうかな?」 

 確かにふたりとも180超えで同じぐらいの身長だ。
 冗談とも本気ともつかないHIROTOの提案に、一瞬ドキッとしてしまう。

「10コも年下のHIROTOさんの影武者は、いくらなんでも無理があるよ」

 はははっ、と笑ってごまかしたけれど、HIROTOは悪戯を企んでいるよう目を細めた。
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