アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 その場から早く立ち去りたくて、受け取ってしまった名刺はバッグの外ポケットに差し込んだままだ。

「その元カレに何か言われた?」

「積もる話があるとか、食事しようとか言われて名刺をもらったわ」

 すると、愛理は頬に手をあて考えるような仕草をみせる。

「会う会わないは、由香里の判断で良いと思うけど、いまお付き合いしている人を優先してね。私は、由香里を振り回すぐらいの年下彼氏を頼もしく思っているんだから大切にしてあげて」

「そうね。振り回されてばかりだけど、楽しくやってるわ」

 頭の中で大都を思い浮かべると、自然と頬が緩む。

「あっ、いま、彼氏のこと考えたでしょう。幸せそうな顔してた。ふふっ、やらしー」

「もう、からかわないで!」

「でも、安心した。彼氏のこともそうだけど、自分のことをも大事にしてね」

 愛理は、柔らかな笑みを浮かべた。
 きっと、私がワンナイトで遊んでいたことも知っている愛理が、心配してくれていたことが伝わる。

 寂しさを埋めるように温もりを求め、それでいて心をみせるのが怖くて、
浅い付き合いを繰り返し、また、寂しくなる。
 そんな私は、友人の目にはあぶなかっしく見えていたのかもしれない。

「ありがとう。やっぱり、私が男だったら愛理にプロポーズしたのに」

「ふふっ、残念」
 
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