アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

推し活しませんか?

「ツアーが始まるから、仕事で帰って来れない日がこの先チョイチョイあるんだ。寂しい?」

 朝、大都にそんな話をされて、思い出してはイラッとしてしまう。
 仕事で忙しいなら仕方のない、寂しいも何にもないはずだ。その辺りは理解しているのに、わざわざそんな風に言うなんて……。
 あら? もしかして、「寂しい」って言ってもらいたかったのかも。
 可愛くない自分に気付いて、「はぁー」と大きなため息を吐き出した。
 
 エステサロンmodération 赤坂店の奥にある事務所で、パソコンに表示された昨日の売り上げやお客様の予約状況などをチェックしながら、大都のことを考えてしまう自分に呆れ、手を止めた。
 グンッと大きく伸びをして、もう一度パソコンに向かうが、集中できない。
あきらめて立ち上がり、隣にある休憩室に足を向ける。

 ドアを開けると休憩中の松本さんと福田さんが雑誌を広げ、クスクスと笑いながら話しをしていた。

「お疲れ様、楽しそうだけど、なにか良いことあったの?」

「あっ、オーナーお疲れ様です」
「お疲れ様です」

と言ってからふたりは顔を見合わせ、手にしていた女性向け雑誌を見せてくる。

「雑誌の特集に推しが出ていて、ちょっとセクシーというか……」

 と、広げたページには、”官能・美BODY”というタイトルが付けられ、上半身を露にし、腰に白いシーツを巻き付け横になっている。ほとんど裸のHIROTOが居た。
 見慣れた体だが、ライトの加減や撮影のアングルで別人のようにも見える。

 不思議な感覚で眺めていると、横から松本さんが食い気味に話しかけて来る。

「BACKSTAGEのHIROTOなんですが、知ってますか? 私の推しなんですけど最高にイイと思いません?」
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