アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 ヘッドボードに手を伸ばし、スマホを引き寄せた。

『おはよう、今起きたからね。お仕事頑張って』と大都へメッセージを送る。
 色気もそっけもないから、コケッコーと鳴いているニワトリのイラストのスタンプも張り付けた。業務連絡になっていないだけ、私にしては上出来と自画自賛する。

 寝起きの悪い私は、大きなあくびをして、ベッドから起き上がりバスルームに向かう。今はこの部屋にひとりなので起きたままの姿、つまり一糸まとわぬ状態だ。
 洗面台の大きな鏡に全裸の姿が映り、違和感を感じた私はジッと目を凝らす。

「んっ?」

 くるりと向き直り、背中も鏡に映して確認する。

「あれ?」

 鏡に顔を寄せ、デコルテ部分を擦る。

「嘘でしょう⁉」

 思わず大きな声を上げた。
 なぜなら私の自慢の肌、それもデコルテだけならいざ知らず、お腹や背中にまで無数の紅いキスマークがついていたからだ。
 ”独占欲強いから覚悟して……”と言われたのをボヤっと思い出す。

「覚悟って、これなの⁉ まったくもう!」
 と口にしたけれど、本気で怒っている訳じゃない。
 たくさんの「愛している」の言葉と共に、体中にキスをされた甘い時間の証拠。それなりに経験はあるけれど、深いところでひとつになるような、体の芯から痺れる感覚を体験するのは初めてだった。

 体を繋げるだけのSEXでは味わえない、心を繋げる行為のMake Loveなのだと思った。
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