私を導く魔法薬

森にやってきた兵士達

ザッザッザッザッ

 と、森の入口近くから何者かが数名で歩く音がする。

「…この魔力の高さ、純魔族たちだわ…何の用かしら…」

 この森自体に用があるだけならまだいい。
 しかしここは魔族の国の外れ。

 それに今まで何かの用があるからと、こんなところまで何名もで押しかけてくることなど今までなかった。

 だとすれば…


ザッ…!!

 足音はすぐ近くで止まる。

「っ、こんなところまで、何の用よ!!」

 魔女はそちらに向かって声を張り上げた。
 すると黒い霧に包まれた兵隊たちが、森の木々をまるで柳の枝でも撫でるように避けて現れる。

「清き森の魔女ダリア、やはりいたか」

 魔王城の紋章が焼き付けられた鎧を身にまとった兵隊たち。

「…城の兵…!?やっぱり…」

 そう彼女が呟くのを聞きつけ、格上の鎧の兵士長が進み出た。

「察しがいいようだ、魔女ダリア。その罪人を渡してもらおう」

「罪人ですって…!?」

 ダリアは突然のことに面食らった。
 兵士長はやれやれといった様子で彼女に告げる。

「その男は国を氷漬けにした罪人だ。現にこの森も未だ凍っているではないか。すでに魔王様からは男の連行を命じられている。連れて行くぞ」

「…すでに魔王様が…!?」

 もう威勢も弁解も通用しない。
 魔王命令まで下っているなら、彼は連れて行かれるしかない。

「っ、私も連れて行って!魔王様に話があるの、お願いします!」


 魔力制御の腕輪を着けさせられたダリアと彼は城へと連れて行かれた。
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