私を導く魔法薬
「…なんで…なんで笑えるのよ…私は失敗したのよ。あんたにまで私と同じ思いをさせることになるなんて……」

 ダリアは強く首を横に振り、そして続ける。

「責めなさいよ!!失敗した私を責めなさい!これじゃあんたからはお礼どころかお金も魔力も貰えないわよ!!笑ってなんて、いられるわけないじゃない!!」

 しかし彼は真剣な表情でダリアに語り掛ける。

「…なぜお前を責めなければならない?俺の願いは俺の記憶を戻すこと。体も少々変わったが体調は何ともない。お前はよく頑張ってくれたんだ。後遺症が多少残るのは仕方がないだろう」

「そんな…そんな問題じゃ……」

 どう謝ったらいいのか、なんと説明すれば分かってもらえるのか…

 ダリアはただただ下を向き拳を握りしめたまま、心配気な彼にしばらく抱きかかえられていたが、全く気持ちの整理がつかない。

 いたたまれなくなった彼女は彼の腕から抜け出し、家に駆け込み戸を締めてうずくまる。

「ダリア…」

 家のすぐ外から、彼の沈んだ声が聞こえた。

「そんなに自分を責めないでくれ。これでもお前には感謝しかないんだ。今まで俺のような極めて人間に近い魔族が近くにいなかったのなら仕方がないことだろう?…俺が人族の国からやってきた目的は、自分のルーツを知ることだった」
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