【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

裁きの時

 騒ぎの翌日――。
 逃げ出した囚人は全員捕まり、街は平穏を取り戻した。

 だが、ほっとしたのも束の間、王都にさらなる激震が走る。

 
 ――混乱のさなか、メイナード殿下が襲撃された。

 
 これから裁判所で、メイナードを襲った反逆者の公開裁判が行われる。傍聴席には、貴族平民問わず、多くの人が集まりごった返していた。

 
(シリウス殿下、どうか。どうか……ご無事でいてください)
 

 こみあげる不安感と焦燥感に苛まれながら、私は静かに席で始まりを待った。その間にも、人々の囁き声が嫌でも耳に入ってくる。

「駆けつけた騎士の話によると、シリウス殿下が血のついた剣を持っていたそうよ」
 
「おいおいまさか、反逆者ってのはシリウス殿下なのか?」

「他に誰がいるっていうんだよ。メイナード殿下を一番恨んでいるのは、あのお方だ」

「反逆罪は大罪だぞ……。恩赦でもないかぎり、シリウス殿下は処刑だろうな」

 
 耳障りな雑音が私の心をかき乱す。
 
 込み上げる感情を飲み込むように、私はぐっと拳を握って奥歯をかみしめた。

 星空の下を一緒に歩いたあの日、シリウスは『自分を取り戻せた気がする』と晴れやかに笑っていた。だから、きっと大丈夫……。
 
 いよいよ開始時間が迫り、張り詰めた空気が室内に漂い始める。
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