【コミカライズ】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

墜ちた聖女

 宰相が「定刻よりやや遅れましたが、これより王位継承者の選定式典を開催します」と宣言した。

 直後、シリウスが片手を上げる。

「式典の前に、国王陛下、ならびにこの場にいる全員へ、ご報告したいことがございます」

 国王陛下が「聞こう」と鷹揚に頷く。

「陛下の寛大なお心に感謝致します。それでは、この場に『証人』を召喚いたします」

「証人?」

 誰もが怪訝そうな顔をするなか、シリウスは静かに頷いた。
 
 その合図を受けて、一人の男が御前に現れる。

「あんたは……!」

 驚きのあまり、ミーティアが扇子を手から取り落とす。

 陛下の前で恭しく一礼した男――ダニエル・カルミア侯爵子息は「ご報告いたします」と口火をきった。
 
「私はこの場で、聖女の罪を、嘘偽りなく証言すると誓います」

 
 ダニエルの言葉に、会場が一気にざわめく。

 
「まず一つ目の罪について、聖女ミーティアは私に『シリウス殿下を殺せ』とお命じになりました。これが、証拠の念書です」

 国王陛下に見せるように、ダニエルが念書を高く掲げる。

 聖女印とサインがそろった書面に、その場にいた者達はもれなく言葉を失った。
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