キミと放送室。






「名波先輩、こっそり練習してます?」


お昼休み、放送室。


音楽を流してスタジオに入ると、名波先輩がソファでギターを弾いていて、メロディになっているし、サマになっている。


「まさか。センスよ」


また得意気にそう言った先輩は「はい、メダカ」とギターを私に差し出した。


私はそのギターを受け取り、先輩が座るソファにぼふっと座った。


私だって、段々と音が綺麗に鳴るようになった。
弦の押さえ方のコツも掴んだ。

「メダカも上手くなってんじゃん」

「そ、そうですか?」

「うん」


名波先輩に褒められて、嬉しくなった私はもう一度、弦を弾いた。





放送室の中では、ちょっとだけ自分に自信が持てる。

ギターなんて周りにやってる人もいないし、こうして毎日少しずつだけど、きのう出来なかったことが出来るようになっていくことが、私の自尊心を満たしてくれる。





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