キミと放送室。


あれ?

一緒に、ギター練習してた…よね?


名波先輩、音鳴らせてなかったのに。




葉山先輩のバンドが3曲披露したけれど、何も覚えてないし、何も耳に入らなかった。


ただただ、聞き慣れた名波先輩の声だけが私の鼓膜に残響を残した。







会場の外にちょっとした待ち合いスペースがあって、チケットにセットでついてきたドリンクを飲みながら、


「カッコ良かったぁ悠平くん!やばい」


と、紗良が隣でキャッキャとはしゃいでいる。


「いや、俺も鳥肌立った。男から見てもカッコ良かったわ」

有島くんも少し興奮気味だ。



「紗良ちゃーん!」


その声に3人とも振り返ると、大袈裟に手を振りながらこちらに向かって歩いてくる葉山先輩が見えた。

その少し後ろには名波先輩も。


葉山先輩は私と有島くんには目もくれず

「どうどう?見てくれた?」

と、紗良の手を握った。

「悠平くん、かっこよすぎ」

「まじっ?ヤッター」

2人してぴょんぴょんしている。


私は名波先輩の方を見れない。


「あっ!2人もありがとね来てくれて」

葉山先輩が思い出したように声を掛けてくれた。

「こちらこそ、感動しました!」

有島くんがそう言うと、気をよくした葉山先輩は「えー?そう?嬉しい事言ってくれる後輩だなぁ〜よし!みんなでメシ食って帰ろう」と言い始めた。



「賛成ー!」

と紗良が言い、歩き始めた3人のあとを私が慌てて追いかけようとすると腕を掴まれ引き戻された。


もちろん腕を掴んだのは名波先輩で、目も合わせられない私は下を向いたまま「…なんですか」と言った。







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