僕のお嬢
それから芸能界のスキャンダルやら人気コスメを肴に、飲んで食べて、良い時間に里沙を家まで送った。明日のことはお互い触れない。普通に『おやすみ』を言い合って別れた。

「リサちゃん何かあった?」

後部シートに一人になってしばらくすると、察しのいい都筑が運転席から。隠すことでもないし、かいつまんで聞かせる。

「・・・どんな形で誰と出会ったとしても、最後は笑って死ねたら本望よ」

人生なんてどう転ぶか分かんない。あたしも里沙も。

「あの小娘なら大丈夫、案外図太いから」

「うんまあ・・・そんなに心配してないのは同感だけどさ」

「これでスッパリ諦めつくでしょ、新太も」

『も』?

「新太『も』って、え?新太って里沙に惚れてたわけ・・・?!」

「・・・・・・お嬢は本当に鈍いのよねぇぇ」

深い溜息を吐かれて、呆気にとられるあたし。

「どうにもならないのは本人達が一番よく分かってたと思うわ。終わり方としては上出来よ」

まるで気付かなかった。鼻の奥がつんとした。女は遊びだって勝手に思ってた。純愛だったんだ。軽いフリするしかなかったんだ、叶わないから。

「・・・新太ってもしかしてイイ(やつ)?」

小さく鼻をすすりながら。

「さあ気のせいじゃないかしら」

ルームミラー越し、都筑の目がシニカルに笑ってた。

「明日が、あの子達に綺麗に残ればいいわね。どこかに飾っておけるくらい」

心から。
月のない夜空にあたしも祈った。




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