都市夢ーとしむー

第一章/怪しき兆し

契約者
その1/白日夢 



OLの原アユムは、まさに白日夢に飲み込まれる寸前と言えた。
それは主客転倒…。
夢に、現実を放棄した魂を放り投げてしまう自分を自覚する自分…。


...


最初はおぼろげだったあの場所、あのバス‥。
行き先は”極楽”…。
それは、時を追って次第に霧が晴れるようだった。
行き先案内人は黒いスーツを身に纏った高身長の若い女…。


...


その女は笑っていた。
そう、営業スマイルそのものだった…。
”いらっしゃいませ、本日はようこそ…”
だが、そこでいつも夢は現実に溶けた。


...


「…アユム!ちょっとー、大丈夫?もう昼休みよ。コピー機の前で直立不動は不気味だって。…まあ、生理とかかな、はは…」
同僚のナナミはそうは言っても、顔が少しばかり引きつっていた。

”ナナミ…、実は変な夢見るの、起きてる時…。仕事中も…”

アユムはこの言葉が喉まで出かかったが、かろうじて飲み込んだ。
仲のいいナナミは悲しいかな、察していた。
アユムは変だと…。


...



”もうすぐだ…。私はこの世界から消えたがっていた。それは偽らざる事実だ。迎えに来る…。たぶん、あの女が…”

アユムは”あの女”と”契約”を交わした潜在意識の存在を、今やはっきり認識していた…。






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